ナチス躍進のかげには、ヒトラー・ユーゲントの存在があった。小さなナチス党員となるべく教育された子どもたちは、何を思い、どう行動したのか?ニューベリー賞銀賞受賞作。
第一次世界大戦の敗戦と、
ベルサイユ条約による制裁が、ドイツに貧困と暗い影を落とす。
抑圧された暮らしの中で、
「自分たちは優れた民族である」と鼓舞し、
「自国のために立ち上がろう!」と言う、
ヒトラーの登場は輝いて見えただろう。
大人ですら傾倒したんだから、
特に疑うことを知らない子どもにとっては
ヒトラーはスーパーヒーローに近い存在だったんだろうな。
この本は、ヒストリーチャンネルを観ているような感覚で、
ヒトラーユーゲントだった当人、
ユダヤ人などの姿がインタビューシーンと映像として頭に浮かんでくる。
当時厳しい情報規制と情報操作により、
ユダヤ人をはじめとする、迫害を受けた人たちが、
どんな酷いことをされていたか、知らなかったドイツ人も多かったと言う。
知らなかったのか。知ろうとしなかったのか。
知ったところで、密告と処刑が蔓延する生活の中で、何が出来たか。
何を信じれば、自分や自分の家族が安全に生き延びられるのか。
倫理を無視しなければ生き延びられなかった人もいただろうし、
危険を犯しながらも、自分の倫理観に沿って行動した人もいた。
ヒトラーはドイツの同一化を目指したが、
それは人が当たり前に持つ、自由を求める心と葛藤し、
ドイツ全体を複雑にしてしまったように感じた。
「ベルリンは晴れているか」でも思ったけど、
ベルリンの、ウンター・デン・リンデンって、とってもいい響き。
口に出して読みたいドイツ語。
何回も何回も口に出してつぶやいている。
- 作者: スーザン・キャンベルバートレッティ,Susan Campbell Bartoletti,林田康一
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/10/30
- メディア: ハードカバー
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